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Corporate Learning & Development

企業内教育、e-learning、人事などなど

システム思考

前回全体像を捉えることの大切さについて書きましたが、今回も少し続編のような内容です。

 

たまに電車とかで聞こえてくる会話。

男:「彼のどこが好きなの?」

女:「全部好き!」
男:「全部って何だよ。のろけやがって」
女:「だって全部なんだもーん」

この会話を聞いて何を感じるでしょうか。単純なのろけ話と侮るなかれ。
実はこの話は単純なのろけ話ではなく、経営や世の中に対する洞察が詰まっているのです。

「何が特に優れているのが分からないが、1つ1つが実はしっかりと密に相関し全体のシステムとして強みを発揮しており、それらが顧客が求める価値提供をしっかりと出来ている」
という視点で考えると経営との繋がりを強く感じる男女の会話なのです。

以前僕は経営大学院に通っていましたが、経営大学院生の初期の段階では、「経営」といういきなり全体像を学ぶことよりも、まずは経営を構成する各領域について学びを深めていきます。

 

マーケティングの切り口で経営を見るとどうなのか」

「会計という切り口で見ると経営はどうなのか」

「リーダーシップという切り口で見ると経営はどうなのか」

等。

経営を構成する要素である各領域をドリルダウンの思考で掘り下げていくのですが、ここで基本となる思考が論理的思考力という土台のスキルになってきます。

一方、各領域について学びが深まってくると、それらを総動員して経営について考えていくフェーズに移行します。取り組むケースもまさに総合力が問われるものばかり。

ここで問われるのは「なぜその企業が成功しているのか・あるいは失敗しているのか」「今後この企業はどのようにすべきか」という主に2つのイシューです。

 

後者は不確実性もありますが、前者の問いに答えるためには、これまで学んだ能力を総合的に使いこなし分析していかないと太刀打できません。物事を俯瞰するバーズアイの視点を1つ1つを掘り下げるドリルダウンの視点のミックス。

 

よくインタビュー記事や雑誌等で、経営者の方が(おそらく単純化し伝わりやすい点のみを切りだすからであると思いますが)、「うちの強みは人材だ」「うちが成功した要因は初期の段階から海外に進出し、IT投資を積極的に行ったからだ」「うちは社長の強烈なリーダーシップによって大きく変革出来た」というケースがあるが、これはこれで一面の真実であると思うものの、全体を捉えられていないと思います。

言うまでもなく、企業経営においてはあらゆる事象が複雑に結び付いており、因果関係をとらえることが容易ではありません。そこには個別企業の事情だけではなく、事業特性も働いており、複雑怪奇なメカニズムが存在します。

 

こういった問題解決がなされるためには、あらゆる課題を整理する力が必要であり、どのような時間軸でどのような打ち手を実施していくか、バックアッププランは何か等、周到用意なプランと実行が求められます。

そういったことを踏まえると、単純に「経営者の覚悟が変わり、変革できた」というような結論にはなりにくいのではないかと思います。

成熟した産業においては、技術、生産能力、販売力など何か一つに秀でているだけでは競争優位性の獲得は難しく、全てが高い次元で統合され全体として調和していることが重要になってきます。コトラーはこれを全社的マーケティングとよぶし、楠木建教授はストーリーとしての競争戦略とよぶ。色々な言い方があると思うが、本質的には同じことを言っているのだと思います。

全ての部門や戦略上のコンセプトがシステムとして統合されている企業を模倣することは難しい。なぜなら1部の真似は出来ても、全てを真似するには途方もない時間がかかるし、その間にもその企業は進化しているからです。


企業経営より大きな視点で考えると、世の中の問題全てを経営知識のみで解決することも、また難しいということになるのでしょう。深い人間理解、世の中への洞察力、ビジネス競争原理が働かない分野をどう解決していくかについては経営知のみでは解決は難しいことは想像に難くありません。以前ハーバードに大学院留学していた知人が「ビジネススクールも、ケネディスクールも、ロースクールも色々な学部が連携して、世の中の問題解決に挑んでいこうとする姿勢を強く感じる」と言っていましたが、まさに専門家だけではなく、1つ1つの領域に精通しつつも、総合力と判断力を身に付けたリーダーが求められる世の中なのだと感じます。


冒頭に述べた男女の会話も本質は全く同じではないでしょうか。
人を魅力的にする構成要素はそれぞれ存在すると思うし、魅力に感じる優先順位は
人によって異なるでしょうが、それが全体として調和しているかどうかが最も重要な点なのです。

だからこそ「全てが好き」というのは、ここまでした話と全く整合しているし、そのように好かれている人は競争優位を発揮している人というわけです。

そんな人に私はなりたい。